日本では、古くから端午の節句に「子どもの健やかな健康」を祈るために「五月人形」を飾る風習があります。
端午の節句とは、5月5日に子どもの成長を祈る行事のこと。「端午の節句」で部屋に飾る「五月人形」にはさまざまな種類がありますが、その中でも全身が鎧で覆われた「鎧飾り」、頭部の兜のみ使用した「兜飾り」、人形タイプの「大将飾り」が人気です。
兜のみの「兜飾り」は「鎧飾り」よりコンパクトなサイズのものが多く、「省スペースのお部屋に、鎧タイプの五月人形を飾りたい」という時におすすめ。
本記事では、五月人形を「端午の節句に飾る理由」や「鎧飾り、兜飾り、大将飾りの違い」を踏まえた上で、兜飾りの組み立て方、飾り方について紹介します。また記事の最後には、飾り方の動画を掲載しております。
五月人形の「兜飾り」とは
「兜飾り」とは、頭部の「兜」のみを飾るタイプの五月人形のこと。端午の節句(5月5日)に兜飾りを飾ることで、子どもの成長を祈る、または災いから身を守るなどの意味があるといわれています。
なお「五月人形」には、「兜飾り」の他に全身が鎧で覆われた「鎧飾り」、人形タイプの「大将飾り」もあるので、飾る目的、部屋のスペースに合ったものを選ぶのがおすすめ。まずは五月人形の意味を踏まえた上で、「兜飾り」「鎧飾り」「大将飾り」の違いについて紹介していきます。
- 五月人形を「端午の節句」に飾る理由
- 五月人形には「櫃飾り」「兜飾り」「鎧飾り」「大将飾り」がある
五月人形を「端午の節句」に飾る理由
端午の節句である「5月5日」には、その家に生まれた男の子が、無事成長していくことを祈るために「五月人形」を飾る風習があります。
五月人形とは、「鎧飾り」「兜飾り」などの飾り、または鎧を纏った人形のこと。戦国時代は武将たちが鎧、兜で身を守っていたことから、「五月人形」には「災いから守る」「健康・安全を祈る」などの意味が込められているのだとか。
端午の節句では、古くから「鎧・兜を身に着けた『五月人形』を部屋に飾ることで、子どもの健康・安全を祈る(または、災いから守る)」と言い伝えられているようです。
五月人形には「櫃飾り」「兜飾り」「鎧飾り」「大将飾り」がある
五月人形の種類は、大きく4つに分けると最も一般的な飾り方である「櫃飾り」、全身が鎧で包まれた「鎧飾り」、兜のみの「兜飾り」、鎧兜を身に纏ったお人形タイプの「大将飾り」があります。鎧飾り、兜飾り、大将飾りの意味はそれぞれ以下のとおり。
- 鎧飾り(兜、胴、大袖の3体一組の甲冑)……全身を守る
- 兜飾り(頭を守る武具「兜」を飾ったもの)……頭を守る
- 大将飾り(兜鎧を身に纏ったお人形)……災難の身代わり、知性、強く逞しく成長して欲しい
「櫃飾り」は最も一般的な飾り方になります。足がポイントで、湿気から兜を守る役割を果たしています。足には、金具のついた足、丸みのある足、角ばった足などがあり、櫃のデザインの基本になる部分です。
「兜飾り」は「鎧飾り」の略式となるため、正式な飾り方に合わせるなら3体一組の「鎧飾り」がおすすめ。
ただ、部屋のスペースに余裕がない場合はコンパクトなサイズが豊富な「兜飾り」、または人形タイプの「大将飾り」を選ぶといいでしょう。
兜飾りは頭部の「兜」のみを飾るため、飾るスペースに合わせて小さめなサイズを選ぶことができますよ。大将飾りはサイズ種類も豊富なので、小さめの人形タイプを選べば省スペースのお部屋でも飾りやすいはず!
兜飾りの特徴や意味については「五月人形の飾り方の種類は3つ! 特徴や選び方」でも詳しく紹介していますので、ぜひご覧くださいませ。
兜の組み立て方
兜を飾る際には、兜を組み立てていく必要があります。ここでは、兜の組み立て方について詳しく紹介していきましょう。
- 櫃から兜、付属具を取り出す
- 櫃の上に、芯木を載せる
- 芯木の上に袱紗(ふくさ)をかぶせる
- 鍬形・前立てを差して、兜をのせる
櫃から兜、付属具を取り出す
まずは、兜が入っている箱「櫃(ひつ)」の中から、兜、または兜を飾るための付属具などを取り出していきましょう。櫃の中にはいっているものは、主に以下のとおり。
- 兜
- 芯木(しんぎ)
- 袱紗(ふくさ)
- 鍬形(かまがた)
- 前立て(まえたて)
芯木とは、兜を支える付属具のこと。芯木の上に飾ることで、兜の位置が安定し、綺麗に飾ることができます。鍬形は、「兜」の上に取り付ける角のような形の「装飾品」のこと。
前立ては、兜の前方に付ける装飾のことを意味します。形が竜のような形になっている場合は、「竜頭」と呼ばれることもあるようです。兜の種類によっては、「前立て(竜頭)」のない鍬形のみのタイプも。
鍬形、前立ての歴史には、「戦の時に、味方同士の目印になるように」、「武将たちの威嚇を示すためのもの」などの諸説もあるようです。
櫃の上に、芯木を載せる
櫃から兜、芯木を取り出したら、次は櫃の上に「芯木」を乗せます。芯木には横棒がついているので、横棒の長い方を正面に向けて飾りましょう。
芯木の上に袱紗(ふくさ)をかぶせる
次に、芯木の上に袱紗(ふくさ)を被せます。
袱紗とは、絹布を表裏二枚合わせにして作られた布のこと。袱紗は一般的に慶弔行事の際に「祝儀」、「香奠」を包む時に使われることが多いもの。袱紗は慶弔行事の他にも、大切なものが傷まないように保護する時や、物がむき出しにならないように包む時にも使われます。
兜と芯木の間に「袱紗」を挟むことで、木の台による「こすれ」を防ぐため、兜の内側を傷つけずに済みます。
鍬形・前立てを差して、兜をのせる
兜を乗せる「台」を整えたら、次は兜のセッティングを。まずは、兜に鍬形、前立てを取り付けます。次に、兜を「袱紗」のかかった芯木の上に乗せたら完成です。
五月人形「兜飾り」の飾り方を紹介
五月人形「兜飾り」には、さまざまな飾り方があります。飾る際には、部屋のスペースや位置に合わせて適した飾り方を選ぶのがおすすめ。本項目では、「兜飾り」の飾り方について紹介します。
- 平飾り
- 段飾り
- 収納飾り
平飾り
平飾りとは、飾り台の上に五月人形(兜飾りなど)を飾る方法のこと。平飾りにはさまざまな種類があるので、スペースや置き場所に合わせて設置方法を選びましょう。主な「平飾り」の種類は、以下のとおり。
- 床の間飾り……床の間にある台に飾る
- 平台飾り……飾り台の上に置いて飾る
- 高床台飾り……高さのある平台に飾る
「床の間飾り」は、家に「床の間」がある家庭なら設置可能。床の間に飾り台をのせて置くだけなので、とっても簡単です。平台飾りは、飾り台の上に置くだけなので、台の下に布などを敷く必要もありません。高床台飾りは「平台飾り」より高さが出るので、重厚感がアップします。
段飾り
段飾りとは、節句の人形(五月人形、雛人形など)を段に乗せて飾る方法のこと。五月人形の「段飾り」には二段飾り、三段飾りがありますが、一般的には「三段飾り」が主流のようです。平飾りよりもスペースが必要な上に飾り付けに時間がかかる分、豪華で見栄えがいいのが特徴。
収納飾り
収納飾りとは、五月人形、飾り台などがすべて「ガラスケース」などの収納箱に入っているタイプのこと。ケースに入っているため「五月人形」に埃がかぶることもなく、お手入れもスムーズ。持ち運びも簡単で、コンパクトサイズのものが多いことからクローゼットに片付ける時も便利です。
動画で見る、五月人形の飾り方
五月人形の飾り方〜兜飾り編〜
五月人形の飾り方〜戦国武将の鎧編〜
五月人形の飾り方〜よろい編〜
五月人形の飾り方〜奉納の鎧編〜
五月人形「兜飾り」を飾る時の注意点
五月人形の「兜」には、金属、布製の部品が多く使われていますので、湿気に注意する必要があります。保管の際は湿気を閉じ込めないよう、天気の良い日におしまいください。
また五月人形で使用される金属、布は「直射日光」に弱いので、日の当たる場所に飾ると「色褪せ」が起きる可能性も……。五月人形を飾る際には、直射日光の当たりやすい場所は避けた方がベターです。
さらに防虫剤は装飾品に使われている金属との化学反応の恐れがあります。防虫剤は使用しないようにしていただき、代わりとして防湿剤をご利用いただくのがおすすめです。
まとめ
五月人形には、全身が鎧で覆われた「鎧飾り」と、頭部のみの「兜飾り」、人形タイプの「大将飾り」があります。その中でも、兜飾り、大将飾りはコンパクトなサイズが多いので、省スペースのお部屋で飾りたい時におすすめ。
「コンパクトな『鎧タイプ』の五月人形を求めている」という場合であれば、「鎧飾り」の略式となる「兜飾り」を飾りましょう。
「兜飾り」の兜を飾る際には、まず兜を組み立てる必要あり。
兜の組み立方は、主に以下のとおり。
- 櫃から兜、付属具を取り出す
- 櫃の上に、芯木を載せる
- 芯木の上に袱紗(ふくさ)をかぶせる
- 鍬形・前立てを差して、兜をのせる
五月人形の「兜」は直射日光、水(汗)、油脂に弱いので、取り扱う際には注意が必要。五月人形を飾る時は、手袋を着用して丁寧に。上記で紹介した方法で兜を組み立てて、「兜飾り」をお部屋に飾りましょう。