鯉のぼりというと、三匹の個性的な鯉が風に揺られる様を思い描く方が多いかと思います。鯉のぼりが上がっているのをみると、寒い季節がやっと終わる安心感やこれから暖かくなっていくワクワク感を実感します。
五月人形の外飾りとして古くから愛される鯉のぼりですが、全国各地に職人さんがいます。そのため、地域ごとのデザインには違いがあります。今回はそんな日本の風物詩でもある、鯉のぼりの全国各地のデザインの違いについて、ご紹介します。
関東地方編
関東の鯉のぼりは発祥地の江戸(東京)を中心に、浮世絵に代表される写実的なデザインの鯉のぼりが始まりと言われています。当時は黒い鯉のぼりが主流だったようで、和紙で作られていたと言われており、作り手は江戸凧の職人でした。
やがて江戸凧の色彩の技術を取り入れた極彩色の鯉のぼりへと変化を遂げて隆盛していきます。また線の細かさや鱗の柄の繊細さなどが大きな特徴として挙げられます。
都心部ではなかなかみることの少なくなった鯉のぼりですが、現代においてもそうした技が継承されており、特に顔まわりに技術が生かされています。
関西地方編
関西でも江戸時代末期より鯉のぼりが作り始められました。明治初期には国内でいち早く木綿に手描きを始めたと言われており、こちらも大阪の凧職人が手がけていた物が次第に専業化していきました。
白地に濃淡のきいた作画には、金銀を用いずにそれぞれの色を最大限に生かした、澄んだデザインの鯉のぼりが大阪府堺市を中心に現在も作られている他、戦後兵庫県や岡山県へも伝播していきました。
中部地方編
愛知県の岩倉市、岡崎市、名古屋市に4軒と岐阜県郡上八幡市に1軒の鯉のぼりを製造する職人が現在も活動しており、鯉のぼりの風習の盛んな地域です。
多くの工房では、現代でも手染めの鯉のぼりが受け継がれているそうです。
手描きに似た字面に見えますが実は染めの工程は、糊を置きそれをマスキングにして色を染めて行くという手順になっています。
色合いも関西と関東が混ざったような、地理的にも両方の良いところ取り入れたかのような表現が特徴的です。
染め鯉独自の白い線がくっきり浮かび上がる中に柔らかいぼかしの効いた独特の鯉のぼりになっています。
四国地方編
四国地方の大きな特徴としては、製紙業が盛んな点が挙げられます。愛媛県四国中央市などですき出された和紙を使い、昭和中期頃まで和紙製の鯉のぼりが多く作られていました。
紙は単価の割に輸送コストがかかるため、加工してから全国に運ばれたため、四国地方にて鯉のぼりの製作まで受け持つようになりました。そのため、愛媛県四国中央市に1軒、香川県坂出市には3軒の鯉のぼり業者が現在も鯉のぼりづくりを行っており手描きをする職人もいます。
ほとんどはプリントに置き換わりましたが、現在の鯉のぼりのデザインにもかつて四国で栄えた鯉のぼりの意匠を感じる部分があり大切に受け継がれています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?各地方によって、製法やデザインのルーツに違いがあって、とても面白いですよね!
そこには地域ごとに大切にしている「何か」があって、各地の職人が協力しあって技やこだわりを次の世代につなげている様が少し見えたような気がしました。
日本における伝統文化の考えの本質に、少し触れることができたようなそんなご紹介でした。
以上